戦場に輝くベガ ストーリー
プラネタリウム番組「戦場に輝くベガ~約束の星を見上げて」は、ほんの70年前、星が武器になった時代を描いた2006年初版公開の作品です。
天文航法(*)で陸上爆撃機「銀河」を導く若き偵察員和夫と、航法に必要な高度方位暦をつくる学徒勤労動員の女学生久子。二人は離れていても、いつでも「ベガ」を見上げようと約束します。
離ればなれになったふたりが想いをつなぐ星。
若き兵士が命を託す星。
そして、爆撃機を敵地へ導く武器になった星。
沖縄戦出撃の前夜、和夫の久子に宛てた最後の手紙に「星が武器としてではなく、希望の光として輝ける日が来ることを祈っています。」と綴られていました。ベガの光はいまも変わることなく私達の頭上で輝き続け、大切な何かを伝えています。
(*)天文航法:星を測って自分の位置を知る方法
天文航法とは、飛行機が現在位置を正確に知り、目的地まできちんと進むための航法の一種で、目印にするいくつかの星の高度を測って、そこから自分のいる位置を算出する方法です。この航法を担当するのが当時偵察員の重要な任務でした。
戦争末期、熟練の偵察員がいなくなる中で、和夫のような学生にもすばやく天文航法ができるように、ということで、なるべく簡単に行うための「高度方位暦」というものが海軍水路部で開発されました。
ある基地における星の高度と方位のデータが書かれた「高度方位暦」を学徒動員の女学生たちが計算を行っていたのです。
登場人物のご紹介
久子
久子は、東京下町に暮らす女学生。子どもの頃から和夫から星の話を聞くのが大好きでした。なかでも七歳の時、和夫に教えてもらった七夕の星、こと座のベガとわし座のアルタイルは心に残っています。いま、思いを込めて、勤労する海軍水路部で高度方位暦の計算に励みます。和夫の無事を祈って・・・
和夫
和夫も、久子と星の話をするのが何より好きでした。幼い日の思い出の星・ベガ。「どこにいても、どんな時でも見上げよう」二人の“約束の星”ベガ。
爆撃機・銀河に乗ってベガを頼りに飛行する和夫が、爆撃機の窓越しに見たものは・・・。
「ベガよ、約束の星よ・・・久子さんのところへ・・・どうか、あの人のところへ帰してください」。
沖縄の戦場に、和夫の叫びがこだましました・・・。